ライトノベル作家兼シナリオディレクターの水市です。
シナリオディレクションの際には「読み手の皆様が違和感なく読めるテキストになっているか」という基準で、注意深くチェックします。
二重表現(重言)があると違和感が生じるものですが、見落としがちなので気をつけていただきたいですね。
意外と気づきにくいミス「重言」
いきなりですが質問です。
以下の文章には一つおかしなところがあります。
「風が強いわね……」
シルヴィアは草原を眺めて、小さく呟いた。
上記の文章を読んで、どう思われましたか?
特に違和感なくお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんね。
もちろん、このままでも意味は伝わります。
ただ、「プロのシナリオライター」の観点では、修正すべき箇所がひとつあります。
それがどこなのか、お分かりになりますか?
「風が強いわね……」
シルヴィアは草原を眺めて、小さく呟いた。
× 小さく呟いた。
〇 呟いた。
「呟く」という言葉の意味は「小さな声で独り言をいうこと」です。
「呟く」という言葉の中に「小さな声で」という意味が含まれますので、
わざわざ「小さく」という副詞で修飾する必要はありません。
他にもたくさんある「重言」
このように、意味が重複してしまって良くない日本語を総称して
「重言」といいます。
「重言」の有名な例に、以下のようなものがあります。
- 馬に乗馬した
- 頭痛が痛い
- 日本に来日した
- 学校に登校する
- 初デビュー
- まだ未定
- 予算内の中で
- 違和感を感じる
経験豊かなシナリオライターでも、油断するとこのような「重言」を書いてしまうことがあります。
自分が書いた文章が「重言」となっていないかどうか、気をつけてチェックしたいものです。
今回のまとめ
さて、今回は二重表現、重言について解説してきました。
シナリオライターの実力を測る際に参考にしてみてください。
とはいえ、言葉の使い方は時と共に移ろうものです。
昔は「重言」とされていたものが「一般的な使い方」として定着することがあります。
「事前予約」⇒「事前」と「予」の意味が重複しているのですが、既に定着した感がありますね。
「故障中」⇒「故障」が状態を表す言葉なので「中」で修飾する必要はないのですが、これも許容されているように思います。
国語辞典は絶対のものではなく、時代の変化に合わせて内容が変化しています。
杓子定規に「あれもダメ、これもダメ」と決めつけるのではなく、「現代の読者の感覚」を常に意識するように心がけましょう。
二重表現ってなに?
シナリオディレクションの時にどんなところを注意して見ればいいの?